税務
年末調整の電子化について
毎年11月初旬頃から年末調整が始まります。
これまでの流れは、
1.家族構成の用紙及び生命保険の契約内容等を記載する用紙を各従業員に配布
2.定めた期日までに記入された用紙、生命保険会社からのハガキ等を回収
3.年末調整作業を実施
というものでした。
毎年の作業とはいえ「家族構成等、毎年同じ内容を記入または確認するのが手間に感じる。」「保険会社から届くハガキのどの部分を記入すればよいのか分からない。」「契約数が多い場合の計算方法が分からない。」等の要望が各会社の担当者に寄せられます。
これらの課題に対応するために、令和2年分の年末調整から手続が電子化されます。
具体的には、
1.税務署が提供する年末調整用ソフトを各従業員が自身のPCまたはスマートフォンにダウンロードする。
2.ソフトに家族構成を入力する。
※このソフトは来年以降も使用できるので家族が増えない限り再入力は不要です。
3.生命保険、損害保険の会社HPに各従業員がアクセスし、従来ハガキで交付されていた保険料等の情報をデータで入手する。
※住宅ローンがある方は住宅ローン残高証明もデータで入手可能になります。
4.入手したデータをダウンロード済のソフトにインポートする。
5.インポートされれば保険料の会社名、控除金額などが自動計算される。
※自動計算されるので年末調整計算側は検算、チェックが不要となります。
6.そのソフトのデータを会社へ提出する。
要約すると受け皿となるソフトをインストールし、家族構成を入力し、保険会社からのデータをそのソフトにインポートし、提出(送信)してもらう、という流れです。
この制度は、税務署へ承認申請書を提出すると、令和2年分の年末調整から対応可能となります。
まず頭に浮かぶのが「自社の従業員のうち何人がこれに対応できるのかな?」ということだと思います。当然今年から全従業員にこのやり方を求めるのは無理があると思います。特にご年配の方は抵抗を示される可能性が高いです。その手続を会社担当者が一人一人に指南する訳にもいかないので、抵抗がある方は従来の紙媒体での提出で問題ありません。
従業員側に立った場合の電子化のメリットは、前述した記入または確認の省略化以外には、ハガキを紛失した場合の再発行依頼の必要がなくなる程度しかないのが現状です。従業員側に大きなメリットはなく、年末調整計算を行う側の作業省力化が大きなメリットになる改正なので、なかなか浸透しないかもしれません。一方で抵抗を感じない方にとっては諸々の手続が楽になるので、まずはその抵抗を感じない方の分だけでも電子化をしていけば十分だと思います。
ここ最近普及率が増えているマイナンバーカードをお持ちであれば、マイナポータル(自身の様々な情報が格納されるシステム)に全ての保険会社の情報を集めることも可能です。マイナポータルから情報を年末調整ソフトにインポートし、そのデータを提出するだけなら従業員の方々の作業も非常に楽になります。
機会があれば従業員の皆様にヒアリングしていただき、どちらの形式がお望みか確認してみて下さい。